ゲーム概要 『Stray(ストレイ)』は、BlueTwelve Studioが開発したアドベンチャーゲーム。2022年に発売され、家族とはぐれた一匹の猫が、廃墟と化したサイバーシティから脱出する方法を探す物語だ。
舞台となるのは、ネオンが輝く巨大な都市。しかし、そこに人間の姿はない。街にはドロイドたちが暮らし、地下や路地裏には危険なクリーチャーが潜んでいる。プレイヤーは猫そのものを操作し、高所へ登ったり、狭い隙間を通ったり、屋根の上を移動したりしながら、この世界に何が起きたのかを探っていく。
旅の途中で出会うのが、小型ドローンの「B-12」。B-12は翻訳やアイテムの管理、周囲の情報収集などを担当し、猫とともに都市からの脱出を目指す相棒になる(Annapurna )。
GPAでは、グラフィック90%、退廃的世界観85%、感情的物語80%、ストーリー充実度75%、実存在的テーマ65%、ダーク60%、頭脳55%、テキストADV50% という評価になっている。
1. 「猫であること」が、そのままゲームシステムになっている 『Stray』最大の特徴は、主人公が猫であることを単なる設定で終わらせていない点だ。普通の人間キャラクターなら入れない狭い隙間に入る。高い場所へジャンプする。細い足場を歩く。屋根の上を移動する。段ボール箱に入る。壁や家具を使って移動する。こうした行動が、猫という身体を前提に設計されている。
公式でも「猫の視点」で世界を探索し、高所や狭い場所を猫ならではの方法で進んでいくことが本作の特徴として紹介されている(PlayStation )。つまり『Stray』では、猫という設定 → 猫らしい移動 → 探索の楽しさ、という流れがきれいにつながっている。
2. 屋根の上を歩くことが探索になる 『Stray』の都市探索では、地上だけを歩く必要がない。屋根から屋根へ移動し、配管を伝い、看板の上を歩き、建物の内部へ入り込んでいく。この「都市の立体的な使い方」が、サイバーシティという舞台と相性がいい。
人間の視点ではただの建物でも、猫から見ると、「ここに登れる」「この隙間に入れる」「この配管を通れる」という別の探索ルートが見えてくる。そのため、都市そのものが巨大なアスレチックのように機能している。
ただし、自由にどこへでも行けるタイプのオープンワールドではない。『Stray』は基本的にエリアごとに進行するアドベンチャーで、その中に猫ならではの移動ルートや小さな寄り道を配置している。この構造のおかげで、探索の自由さと物語のテンポが両立している。
3. 「猫らしい遊び」が世界への没入感を高める 『Stray』では、物語を進めるために必要な行動だけでなく、猫らしい行動も楽しめる。物を落とす。住民にちょっかいを出す。ソファやカーペットで爪を研ぐ。眠る。段ボールに入る。こうした行動は、ゲームをクリアするための必須要素ではない。それでも、プレイヤーが「猫を操作している」という感覚を強くする。
PlayStationの公式紹介でも、周囲の環境に触れながら、時にはいたずらをするような猫らしい行動が本作の魅力として挙げられている(PlayStation )。猫らしい行動を単なるおまけにせず、世界を観察するためのきっかけとして機能させているのが『Stray』の上手いところだ。
4. B-12との出会いで、猫だけでは解けない謎が動き出す 猫だけで都市を探索している間は、世界の情報を直接理解することができない。そこで重要になるのがB-12だ。B-12は猫の相棒となる小型ドローンで、住民とのコミュニケーションや翻訳、アイテムの管理などを助けてくれる。
この組み合わせが面白い。猫は「身体」を担当する。B-12は「情報」を担当する。つまり、二者が揃うことで初めて都市の謎を理解し、先へ進めるようになる。単なる便利なナビゲーション役ではなく、ゲームプレイと物語の両方に関わるキャラクターになっている(Annapurna )。
5. ロボットたちとの交流が世界の歴史を見せていく 都市に暮らしているのは、人間ではなくドロイドたちだ。それぞれが仕事を持ち、生活を送り、コミュニティを形成している。主人公の猫は、その社会に突然入り込む異物のような存在になる。
そのため、プレイヤーは猫として街を歩きながら、そこに住むドロイドたちの生活を見ることになる。誰かの依頼を手伝ったり、必要なアイテムを探したり、別の住民から情報を聞いたりすることで、少しずつ都市の過去が見えてくる。ストーリーを進めるための会話だけではなく、街の住民そのものが世界設定を伝える役割を持っている。
6. 「人間がいない世界」が生む退廃的なSF GPAで退廃的世界観85% となっているのは、『Stray』の大きな特徴だ。ネオンに照らされた街は一見すると華やかだが、その実態はかなり暗い。建物は古び、路地にはゴミが散乱し、植物が人工的な都市空間に入り込んでいる。そして何より、人間が存在しない。
プレイヤーが都市を探索していると、「ここで人間は何をしていたのか」「なぜいなくなったのか」「このドロイドたちは何のために生きているのか」という疑問が自然に生まれる。公式設定でも、忘れ去られた都市の古い謎を解きながら脱出を目指すことが物語の中心になっている(Annapurna )。
7. 感情的物語80%を支える「猫とB-12」 『Stray』のGPAで、グラフィック90%と並んで注目したいのが感情的物語80% だ。その中心にあるのが、猫とB-12の関係。最初は、猫にとってB-12は都市を理解するための便利な相棒に近い。しかし、一緒に行動する時間が増えるにつれて、二者の関係そのものが物語の重要な部分になっていく。
ここで効果的なのが、「猫は言葉を話さない」という設定だ。猫は会話によって感情を説明しない。だからこそ、行動や距離感、寄り添う姿によって関係性を表現することになる。人間同士の長い会話とは違う方法で、プレイヤーに二者の関係を感じさせる構造になっている。
8. 謎解きは「難しさ」より「世界を理解するための手段」 GPAでは頭脳55%。これは本作が高難度パズルゲームではないことを考えると納得できる。『Stray』の謎解きは、複雑な論理パズルを何十分も考え続けるタイプではない。周囲を観察する。必要なアイテムを探す。誰かに話を聞く。装置を操作する。移動ルートを見つける。そうした行動を組み合わせて先へ進んでいく。
つまり謎解きそのものが主役なのではなく、世界を観察する理由として謎解きが存在している。このバランスによって、ストーリーを止めずにプレイヤーへ探索を促している。
9. ストーリー充実度75%と実存在的テーマ65% 『Stray』は猫の可愛さだけで成立している作品ではない。GPAのストーリー充実度75% は、都市の過去、ドロイドたちの社会、B-12の正体、そして猫自身の旅が一本につながっていくことを反映している。
一方、実存在的テーマ65% という評価からは、「人間とは何か」「意識とは何か」「記憶や存在に意味はあるのか」といった問いが読み取れる。ただし、本作は哲学を前面に押し出すゲームではない。そうしたテーマを、猫とドロイドが暮らす世界を探索する中で自然に考えさせる。だからこそ、難しいSF作品というより、まず「猫としてこの世界を歩く」ことを楽しみ、その先で世界の意味を考えられる作品になっている。
10. GPAスコアから見る『Stray』 作品傾向グラフ(Stray) グラフィック90%+退廃的世界観85%+感情的物語80%——世界観・探索・物語が互いに動機を補強。
特に特徴的なのが、グラフィック90%+退廃的世界観85%+感情的物語80% という組み合わせ。『Stray』は、戦闘や育成によってプレイヤーを長時間遊ばせるゲームではない。「この世界をもっと見たい」「この街では何が起きたのか知りたい」「この猫とB-12がどうなるのか見届けたい」という気持ちによってプレイヤーを前へ進ませる。世界観・探索・物語の3つが互いに動機を補強している。
11. こんな人におすすめ ◎ 特におすすめ
猫が好き 雰囲気のあるSFゲームが好き サイバーパンクの世界観が好き 戦闘より探索やストーリーを重視したい Journey やABZÛ のような作品が好きThe Last Guardian のような生き物との関係を描くゲームが好き謎の残された世界を探索するのが好き 比較的短時間で物語を楽しめるゲームを探している △ 人を選ぶポイント
複雑な育成システムや大量の装備、難しい戦闘を求めるプレイヤーには、物足りなく感じる可能性がある。
『Stray』が面白い理由 『Stray』の面白さは、「猫を操作できる」というアイデアを、見た目だけで終わらせなかったことにある。狭い場所に入る。高い場所へ登る。屋根を歩く。物を落とす。眠る。住民にちょっかいを出す。こうした猫らしい行動が、そのまま探索と世界観につながっている。
そこに、B-12との旅、ロボットたちの生活、そして人間が消えた都市の謎が加わる。GPAのグラフィック90%、退廃的世界観85%、感情的物語80% という評価は、まさにこの3つが『Stray』の中心にあることを示している。
『Stray』は、猫の可愛さを見るためだけのゲームではない。猫という「人間とは違う存在」の視点から、誰もいなくなった都市を歩き、その世界で何が起きたのかを知っていくゲームだ。だからこそ、クリアした後に残るのは「猫を操作して楽しかった」という感想だけではない。一匹の猫と小さなドローンが歩いた旅そのものが、プレイヤーの記憶に残る。
同じ「インディー傑作」系なら 名作インディーゲーム50選 も参照。