メタスコア73・Steam好評率54%——それでも「低すぎる」と断言できる理由 『ビースト・オブ・リインカーネーション(Beast of Reincarnation)』は、ポケモンシリーズで知られるゲームフリークが手がけた、同社としては非常に珍しい完全新作の本格アクションRPGだ。発売日は2026年8月4日。レビューはPS5 Proおよび通常環境で実施したが、フレームレートは基本的に安定していて、テアリングも見当たらない。敵が画面に大量出現したときに少し重くなる場面はあるものの、最適化や目立ったバグのなさは高水準だ。「ポケモン以外のAAA」という期待値の高さと、実際の完成度の高さは噛み合っている。問題は、その完成度が序盤の体験設計に隠れやすいことだ。
世間の数字だけ見ると厳しい。賛否両論の空気が強い。
メタスコア73 ユーザースコア6.8 Steamの好評率は54%(低評価46%) ただ、世界観やテーマの作り込みは非常に高く、さすがゲームフリークという完成度だ。音楽性も高い。一方で気になるのは、ほとんど変化のない同じボスや敵が繰り返し出てくる点と、敵の攻撃パターンが単調なぶんパリィ難易度を下げているように感じる点だ。ボタン配置も悪く、判定が微妙でフィールドのアイテムが取りにくい。序盤はカメラの近さも相まって取っつきにくく感じやすいが、進めるほどアクションの手触りが見えてきて評価は右肩上がりに好転する。最初の印象だけでレビューを閉じると、本作の本領はほぼ見えない。
クリア後(約30時間)の最終評価としては、世間の70点台や賛否両論は「いくら何でも低すぎる」と言い切れる。欠点はあるが、一般プレイヤーが遊べば80〜90点台——個人的には86点——をつけられる十分な良作だ。『NieR:Automata』 や『Stellar Blade』 を楽しめた人なら、間違いなく本作も楽しめる仕上がりになっている。数字と体感のギャップが大きいタイトルなので、スコア表だけ見て避けるのはもったいない。
作品傾向グラフ(ビースト・オブ・リインカーネーション) GPA上位タグの抜粋。このページの類似タイトル検索でより詳細な比較ができる。
西暦4026年の日本——空っぽの器だったエマが、心を取り戻していく旅 舞台は西暦4026年、現代から2,000年後の崩壊した日本。「汚れ」と呼ばれる未知の災厄が世界を侵食し、異形のモンスターが徘徊する中で人類は滅亡の危機にある。主人公の少女エマは汚れを浄化する「浄化兵」として、相棒である腐食体の犬・クーと共に、汚れの根源「輪廻の獣」を討伐する旅に出る。設定だけ聞くとダークファンタジーの定石に見えるが、実際に足を踏み入れると「退廃したのに美しい」風景と、犬一匹を連れた旅のスケール感が、他のハイスピードアクションとは違う体温を持っている。世界観とテーマの作り込みは非常に高く、音楽性も高い——さすがゲームフリーク、という手応えがある。
物語の核はエマの成長だ。開始時点の彼女は感情をほとんど持たない「空っぽの器」のように描かれる。旅の途中で障壁や人間模様、過酷な出来事を越えていくうちに、心がどう変化していくかが最大の魅力になる。GPAでも「感情的物語80%・実存的テーマ75%・退廃的世界観85%」と、物語と世界観のタグが揃って高い。バトルの派手さだけを切り取ると見落としやすいが、クリア後に残るのはアクションの手触り以上に、エマとクーの関係性のほうだったりする。
冒険の拠点は大型キャンピングカーのような場所で、クーをはじめ、おじさん役のブラッド、女の子の神楽(カグラ)といった仲間と生活する。感情がわからないエマに対して周囲は排除せず寄り添うので、登場人物の優しさが際立つ。探索素材で神楽が料理を作ってくれたり、拠点に戻ると新しい会話が豊富に用意されていたりと、ソウルライク系にありがちなテキスト解読だけではない、直接的なコミュニケーションの楽しさがある。殺伐としたフィールドから戻ったあとに、日常の温度差で心がほぐれる——その緩急が物語の説得力を支えている。
エマにしか見えない「バイオレット」は、見た目こそ『HUNTER×HUNTER』のカルト風っぽさも感じる。グラフィック上は表情がやや硬く見える場面もあるが、世界観とエマのバックボーンを踏まえて見ると、ちょっとした感情の動きも見かけることができる。派手なカットシーンの連打で感動を押しつけるタイプではなく、日常会話の積み重ねで距離が縮まる構成だ。
戦闘の中心はパリィ——でも判定は甘めで、クー連携が本作の本命 戦闘設計は『SEKIRO』 や『Stellar Blade』系の「パリィ重視のハイスピードアクション」を踏襲しつつ、ゲームフリーク独自の工夫が入っている。スタミナがないのでダッシュも攻撃も制限なく繰り出せる。基本は敵の攻撃をパリィでさばき、隙ができた瞬間に連続攻撃を叩き込む流れだ。
パリィ判定は『Stellar Blade』などと比べてもかなり甘め(ガバガバ)で、タイミングを合わせやすく爽快に決めやすい。敵の攻撃パターン自体が単調なので、難易度を落として間口を広げている印象だ。難易度は3段階あり、ノーマルなら死にゲー級の理不尽さはない。序盤は簡単に感じるが、進行とともに程よい手応えへ変わるので、高難度アクションに慣れていない人でも入りやすい。
スキル解放後は、刀の基本アクションに加えて植物(花)を咲かせる独自アクションが加わる。花をグラップリングフックのように使って空中移動し、上空から襲いかかったり、敵に花を植え付けてワイヤーで急接近したりと、立体的で縦横無尽なバトルが可能になる。
さらに本命が、相棒クーとのコマンド連携だ。パリィ成功などでゲージが溜まると、ボタン一つで画面がスロー/停止し、クーの技をコマンド選択できる。クーの攻撃はダメージ源にとどまらず、エマのHP回復・敵の停止・状態異常付与といったサポート性能が強い。どの技をどのタイミングで出すかの戦略性が高く、リアルタイムとコマンドの融合として見ると、戦闘アクションの面白さ単体では『NieR』や『Stellar Blade』より優れているとすら感じる。「人一人と犬一匹」というコンセプトが、演出だけでなくシステムの芯に刺さっているのが大きい。
類似タイトルとの位置付け
▶ SEKIRO / Stellar Blade ——パリィ精度が勝負の主軸。本作は判定が甘めで間口が広い▶ NieR:Automata ——退廃世界×感情ドラマの質感が近い。戦闘のハイブリッド性は本作がより独自▶ Beast of Reincarnation ——パリィ+花アクション+クーのコマンド連携。GPAアクション性80% ◀パリィ系の難易度比較は パリィ・死にゲー好きにおすすめのゲーム15選 も参照。
探索はストレスフリー、武器は「捨てゲー」がなくビルド勝負 マップはワイドリニア寄りのステージやダンジョンが進行に応じて切り替わる。スタミナ消費がないのでダッシュし放題で、ジャンプ長押しやR2長押しで植物を伸ばし、高所や崖も一瞬で移動できる。崖や高低差は多いが、見えない壁で迷わせる不快感は少なく、動かしてみると直感的にルートがわかる丁寧なレベルデザインだ。「広いのに迷わない」は、序盤のカメラ不満を除けば、探索体験の一番の美点だ。
武器の基本攻撃力はほぼ同等で、序盤のデフォルト武器でもフル強化すれば最終盤まで現役で使える。捨て武器が存在しないバランスだ。そのぶん、武器ごとの特殊効果(パッシブ)の差が大きく、プレイスタイルやスキル構成に合わせて選ぶビルドの奥深さがある。「強い武器を拾って古いのを捨てる」ループではなく、「自分の型に合う効果を選ぶ」ループになっている。
武器強化の上限を上げるには拠点レベルを上げる必要があり、素材はマップの宝箱などに隠されている。メインを追うだけでなく探索する動機がはっきりしている。エマとクーそれぞれに巨大なスキルツリーがあり、レベル上限(100)でも全スキルを取りきれないボリュームで、完全解放が最大の長期やり込みになる。クリア後にはNG+が最初から実装され、周回ごとに敵が強くなるダークソウル系の仕様なので、高難度でのやり込み甲斐もある。品質面でも目立ったバグは少なく、「さすがゲームフリーク」と言える手触りだ。本編の短さを補う意味でも、育成と周回の設計はよく考えられている。
気になる点——カメラ、敵の単調さ、ボタン配置 世間の低評価の背景として大きいのは、初期カメラがエマに寄りすぎていることだ。ほぼTPS/ビハインドビュー状態で、戦闘中の周囲や敵の動きが把握しづらい。冒頭の混戦、狭い地下ダンジョン、序盤の大型ボス(巨大な鹿)戦では画面が混み合いやすく、取っつきにくさにつながる。メタスコアやSteam初期レビューの厳しさにも影響したと考えられる。
そのほか、気になる点は次のとおりだ。
ほとんど変化のない同じボスや雑魚が繰り返し出てくる 攻撃パターンが単調で、パリィは決めやすい一方コア勢には物足りなく感じる可能性 ボタン配置が悪く、判定が微妙でフィールドのアイテムが取りにくい 防具を付け替えても見た目が変わらない(帽子のみ変更可)。『Stellar Blade』や『NieR』のような着せ替えが充実した作品とは、やや差がついた点になっている サイドクエストらしいサイドクエストはなく、クリアは約30時間が目安 フォトモード非搭載、NG+でもムービースキップがない 忙しい社会人には「ダレずに最後まで遊べるちょうど良いボリューム」だが、100〜200時間を求めるヘビー層には物足りない。
一方で、2026年8月10日配信のアップデートでは次の改善が入っている。
今回のアップデート(8月10日配信)
カメラ視点の調整——距離の変更設定が追加されたわけではないが、カメラ距離自体が調整され見やすさが向上 字幕サイズの拡大——字幕テキストが少し大きくなり、視認性が改善 戦闘バランスの調整・緩和主人公エマの被ダメージ時における「受け流し」受付タイミングを調整(連続攻撃を受けにくく緩和) 全難易度においてボスのバランスを調整 ノーマル難易度において雑魚敵のバランスを調整 不具合修正——序盤「壱号地下居住区」で6体目のゴーレムが見つけにくい問題を修正 今後のアップデート予定
周回プレイ・テンポの改善——ストーリーテンポの向上やムービースキップ機能などの対応に期待 最新フレーム生成技術の実装——DLSS 4/4.5(L/M)および FSR4 の実装を予定 第一印象の傷は、すでに手当てが始まっている。発売直後のレビュー合戦で損をしたタイプの作品なので、パッチ後に改めて触る価値は十分にある。
向いている層・向いていない層 ◎ 刺さる層
・ NieR / Stellar Blade好き ——退廃世界とハイスピードなパリィアクションの両立を求める人・ 30時間前後で質を取りたい社会人 ——ダレずにクリアまで持っていけるボリューム感を好む人・ 戦略寄りのアクション好き ——クーのコマンド連携で「いつ何を出すか」を考える戦闘が好きな人△ 検討が必要な層
・ 極限フレームのパリィ勢 ——判定が甘めで、敵パターンの深掘りもコア勢向けとは言い切れない・ 衣装カスタム重視 ——見た目固定は大きなマイナスになる・ 100時間超のやり込み前提勢 ——本編ボリュームは約30時間が目安まとめ:課題はあるが、乗り越えた先に本物がある 『Beast of Reincarnation』は、序盤のカメラや敵の単調さが賛否両論のレビューに出てしまった。ただ、10時間、30時間と進めると、ゲームフリークらしい世界観と音楽、アクションの手触り、クーとの戦略的コマンド連携、ストレスのない移動と丁寧なマップ、エマと仲間たちの温かい成長物語——本来の高いポテンシャルが見えてくる。序盤で手放した人と、クリアまで持っていった人で、評価が二極化するのも無理はない。
衣装変更の欠如や30時間というボリュームには賛否がある。それでも8月10日パッチでカメラや戦闘バランスは手当て済みで、世間の過度な低評価や噂に惑わされる必要はない。「30時間程度で質の高いハイスピードアクションをサクッと楽しみたい人」、『NieR:Automata』や『Stellar Blade』が好きだった人には、自信を持っておすすめできる良作だ。スコアは空気、手触りは本体——その差を自分の目で確かめてほしい一本である。
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