ゲーム概要 『Disco Elysium(ディスコ エリジウム)』は、ZA/UMが開発したテキストADV系のRPG。2019年に発売され、その後フルボイスや追加コンテンツを収録した『Disco Elysium - The Final Cut』が展開された。
プレイヤーが演じるのは、記憶を失った刑事。舞台となるのは、戦争や政治的対立の爪痕が残る架空の都市レヴァショールだ。
物語の中心にあるのは、街で起きた殺人事件の捜査。ただし、本作には一般的なRPGにあるような戦闘シーンがほとんど存在しない。敵と剣や銃で戦う代わりに、人と話し、周囲を調べ、自分の能力を使いながら事件の手掛かりを探していく。
特徴的なのが、主人公の24種類のスキルだ。「論理学」「百科事典」「共感」「意志力」「電気化学」「反応速度」など、それぞれのスキルが主人公の頭の中で独立した人格のように話しかけてくる。同じ人物と会話していても、どのスキルが高いかによって見える情報や選択肢が変わる。
つまり、プレイヤーが作るキャラクターは単なる「能力値の違う刑事」ではない。何を知っているのか、何を恐れているのか、何に興味を持つのかまで含めて、少しずつ人格が変化していく。
GPAでは、テキストADV95%、ストーリー充実度90%、実存的テーマ85% という非常に高い数値が並ぶ。さらに退廃的世界観80%、戦略系80%、マルチエンド75%、感情的物語70%と続く。この数字からも分かる通り、本作の面白さはアクションではなく、会話・探索・スキル・選択を通して、自分だけの主人公を作っていくことにある。
作品傾向グラフ(Disco Elysium) GPA上位タグの抜粋。会話と選択がゲームプレイそのものになる構造を反映している。
1. 戦闘の代わりに「会話」がゲームプレイになる 『Disco Elysium』を理解するうえで最も重要なのが、戦闘の代わりに会話や調査がゲームの中心になっていることだ。殺人事件を捜査するために街を歩き、住民から話を聞き、証拠を探し、ときには相手を説得したり、脅したり、冗談を言ったりする。
ここで重要なのは、会話が単なるストーリー閲覧ではないこと。選択肢の中には、主人公のスキルによって表示されるものがある。たとえば論理的に考える能力が高ければ、相手の発言の矛盾に気づくことができる。共感が高ければ、相手の感情を読み取れる。身体能力が高ければ、力ずくの選択肢が出てくることもある。逆に、特定の能力が低ければ、その情報に気づけないこともある。つまり「会話する」という行動そのものに、RPGの能力値が組み込まれている。
スキルチェックが会話の結果を左右する 重要な行動では、ダイスを使ったスキルチェックが発生する。対応するスキルの値が高ければ成功率が上がり、装備やThoughtsによってさらに補正することもできる。PlayStation公式ブログでも、本作のスキルチェックはダイスによって成否を判定する仕組みとして紹介されている(PlayStation.Blog )。
ここで面白いのは、失敗が必ずしも「ゲームオーバー」にならないこと。会話に失敗して恥をかくこともあれば、思わぬ方向へ話が進むこともある。そのため、すべてのチェックを成功させることが正解ではない。むしろ「この主人公なら、この状況でどう反応するか」を考えて選択することが、ゲームの楽しさにつながっている。
2. 24種類のスキルが「主人公の人格」になる 本作には、知性・精神・肉体・運動能力という4つの能力カテゴリがあり、その下に合計24種類のスキルが存在する(PlayStation.Blog )。
普通のRPGなら、スキルはプレイヤーの攻撃力や防御力を決める数字として扱われる。しかし『Disco Elysium』では、それぞれのスキルが主人公の内面から話しかけてくる。「論理学」は冷静に物事を分析しようとする。「共感」は他人の感情を読み取ろうとする。「内陸帝国」は直感や想像力に近い反応を見せる。「電気化学」は酒やドラッグなどへの欲求を強くする。
同じ出来事を見ても、どのスキルが強いかによって主人公の頭の中で起こる会話が変わる。これによって能力値が、そのままキャラクター性になる。論理的な刑事として事件を追うこともできる。人の感情を優先する刑事になることもできる。直感に従って行動することもできる。あるいは、かなり問題のある方向へ主人公を育てることもできる。「強いキャラクターを作る」のではなく、どんな人間として事件を追うのかを決める。ここが一般的なRPGとの大きな違いだ。
3. Thought Cabinet——考え方そのものを育成する 本作のもう一つの特徴が「Thought Cabinet(思考キャビネット)」だ。ゲーム中の行動や会話によって、主人公の頭の中にさまざまな「Thoughts」が浮かび上がる。それをThought Cabinetにセットして一定時間考え続けることで、主人公の能力や行動に変化が起こる。
たとえば、ある考え方を身につけることで特定のスキルが強化される一方、別の能力に影響が出る場合もある。つまり、レベルアップで単純に強くなるだけではない。主人公が何を考える人間なのかによって、ゲームプレイそのものが変化していく。開発元もThought Cabinetについて、ゲーム中の行動や会話から生まれた「Thoughts」を主人公の内面に取り込み、能力やロールプレイに影響させる仕組みとして説明している(Disco Elysium )。
この仕組みが面白いのは、プレイヤーが意識してキャラクターを作らなくても、プレイそのものによって人格が形成されていくこと。何を話したか。何を気にしたか。どんな行動を取ったか。その積み重ねが、主人公の考え方としてゲームに残っていく。
4. 「正しい捜査」ではなく、自分のやり方で事件を追う 殺人事件を解決するという目的は明確だが、その進め方にはかなり幅がある。容疑者を厳しく追及することもできる。相手の話をじっくり聞くこともできる。証拠を集めて論理的に組み立てることもできる。あるいは、かなり無茶な発言を繰り返しながら捜査を進めることもできる。
Steamの公式説明でも、脅迫、説得、暴力、詩、カラオケなど、さまざまな行動を選択できる自由度が特徴として紹介されている(Steamストア )。ここで重要なのは、「変な選択肢」が単なるおまけではないこと。主人公の能力や、それまでの選択によって、普通の探偵ゲームでは出てこないような選択肢が現れる。その結果、同じ事件を追っていても、プレイヤーによって会話の内容や事件へのアプローチが変わっていく。
5. レヴァショールという街を歩く意味 『Disco Elysium』の舞台となるレヴァショールは、単なる事件現場ではない。戦争の影響、政治的な対立、貧困、労働問題、薬物、個人の過去など、さまざまな問題が街の人々の会話に入り込んでいる。主人公は殺人事件を調べながら、同時にこの街がどういう場所なのかを知っていく。
そのため、メインの事件だけを追うより、街の人々と話したり、寄り道したりすることで見えてくる情報が多い。公式説明でも、レヴァショールの街を探索しながら人々と会話し、事件やサイドケースを進めていく構造が紹介されている(Steamストア )。
ここで重要なのが、街を歩くこと自体が情報収集になっていること。「この人に話しかける意味があるのか」と思うような会話が、別の人物や事件への手掛かりにつながることもある。そのため、マップを効率よく消化するというより、気になった場所や人物を調べていく遊び方との相性がいい。
6. 政治・社会・自己嫌悪を「会話」で考えさせる 本作では、殺人事件だけでなく政治思想や社会問題も大きなテーマとして扱われる。主人公自身がどのような思想を持つのかによって、会話や選択肢が変化する。ただし、単純に「この思想が正しい」と答えを提示するゲームではない。主人公の発言が極端になったり、矛盾したり、本人が自分の考えに振り回されたりすることもある。
そのため、政治的な話題も主人公の人格形成と切り離されていない。Final Cutでは、政治的な考え方に応じた「Political Vision Quests」も追加されている。Steamの公式説明では、プレイヤーの政治的な世界観に応じて新たな道が開かれる追加要素として紹介されている(Steamストア )。
GPAの実存在的テーマ85%という評価も、単に哲学的なセリフが多いからではない。「自分は何者なのか」「過去を失った人間は、どこまで自分を作り直せるのか」「自分の思想や欲望は、自分自身の意思なのか」——こうした問題が、主人公の能力や選択と直接つながっている点が大きい。
7. 失敗してもゲームが続くからこそ、選択が面白い 『Disco Elysium』では、スキルチェックに失敗することがある。普通のゲームなら「失敗=やり直し」と考えがちだが、本作では失敗した結果そのものがゲームの一部になる。説得に失敗する。変な発言をしてしまう。重要な情報を取り逃す。ある人物との関係が悪化する。それでも物語は進んでいく。
だからこそ、プレイヤーは「最も効率的な答え」を探す必要がない。むしろ、自分の主人公がどんな失敗をするのかを見ることも楽しみになる。これは、RPGにおける「正解を探す」という遊び方を少し変えている。完璧な捜査官を作るのではなく、欠点も含めて一人の刑事を演じる。この感覚が、本作のロールプレイ要素を強くしている。
8. GPAスコアから見る『Disco Elysium』 GPAでは、テキストADV95%、ストーリー充実度90%という2つが特に高い。これは単純に「文章量が多い」という意味ではない。プレイヤーの行動の大部分が会話や探索に関係しており、その会話内容がスキル、Thoughts、選択肢、事件の進行とつながっている。そのため、文章を読むこと自体がゲームプレイになっている。
さらに実存在的テーマ85%、退廃的世界観80%という数値も、本作の舞台と主人公の設定を考えるうえで重要だ。記憶を失った刑事が、荒廃した都市で殺人事件を追いながら、自分自身についても少しずつ知っていく。この「事件の捜査」と「自分自身の捜査」が並行して進むことが、本作の大きな特徴になっている。
戦略系80%という数字は、一見するとジャンルから少し意外に感じるかもしれない。しかし実際には、どのスキルを伸ばすか、どのThoughtを選ぶか、どの会話を進めるか、どのタイミングで再挑戦するかなど、プレイヤーが判断する場面は多い。戦闘の代わりに、情報と選択肢をどう扱うかがゲーム上の判断になっている。マルチエンド75%という評価も、プレイヤーの選択によって展開や結末が変化する本作の性質と相性がいい。
9. こんな人におすすめ ◎ 特におすすめ
ストーリーを「読む」だけでなく、自分で変えたい人 — 会話の選択肢や能力によって、見える情報や展開が変わる。一本道の物語より、自分の選択が残るゲームが好きな人に向いている。RPGのステータスが会話にも影響してほしい人 — 普通のRPGでは戦闘のために使う能力値が、本作では会話や探索に直接影響する。探偵ゲームが好きな人 — 殺人事件を追いながら証言や手掛かりを集め、自分なりの仮説を組み立てていく。政治や哲学、人間の心理を扱う作品が好きな人 — 政治思想、過去、依存、自己嫌悪など、かなり重いテーマが会話の中に登場する。失敗を楽しめる人 — すべてのスキルチェックを成功させる必要はない。むしろ失敗によって面白い展開が生まれることもある。△ 人を選ぶポイント
文章を読むことが苦手な人 — 本作では会話と文章がゲームプレイの中心。Final Cutではフルボイス化されているものの、読む量そのものはかなり多い。爽快な戦闘を求める人 — 戦闘アクションを楽しむタイプのRPGではない。明確な正解を求める人 — スキルチェックの失敗を含めて物語が進むため、「最適解を選んで完璧にクリアする」遊び方とは少し違う。重いテーマが苦手な人 — 政治、アルコール依存、薬物、貧困、自己崩壊などを扱うため、明るい雰囲気のアドベンチャーゲームではない。10. 『Disco Elysium』が面白い理由 『Disco Elysium』を一言で説明するなら、「会話を中心にしたRPG」 だ。ただし、単に文章量が多いゲームというわけではない。会話によって情報を集め、スキルによって見えるものが変わり、ダイスによって結果が決まり、Thoughtsによって主人公の考え方まで変化する。
そのため、プレイヤーが作った主人公とゲーム内の物語が切り離されていない。論理的な刑事になるのか。人の感情を優先する刑事になるのか。自分の欲望に流されるのか。過去の自分を取り戻そうとするのか。その方向を決めるのは、プレイヤー自身だ。
そして面白いのは、最初から「こういう主人公を作ろう」と決めなくてもいいこと。プレイ中に選んだ会話や行動が、少しずつ主人公の人格を作っていく。GPAのテキストADV95%、ストーリー充実度90%、実存在的テーマ85%という評価は、まさにこのゲーム性を表している。
『Disco Elysium』は、事件の真相だけを追うゲームではない。事件を追う過程で、自分がどんな刑事を作ったのかを見ていくゲームでもある。大量の文章を読むことに抵抗がなく、会話や選択によってゲームの展開が変わるRPGを探しているなら、かなり相性のいい作品だろう。
まとめ 『Disco Elysium』は、戦闘ではなく「会話」「探索」「スキル」「選択」を中心にしたRPGだ。24種類のスキルが主人公の内面から語りかけ、Thought Cabinetによって考え方そのものを育成し、ダイスによるスキルチェックが行動の結果を決める。
重要なのは、失敗しても物語が止まらないこと。失敗も成功も含めて、自分が作った刑事の人生として物語が進んでいく。GPAではテキストADV95%、ストーリー充実度90%、実存在的テーマ85%、退廃的世界観80%、戦略系80%と、物語と選択に関係する項目が非常に高い。
「ストーリーを見せてもらうゲーム」ではなく、自分の選択を通してストーリーを体験したい人に向いた作品。そして何より、自分がどんな刑事になったのかを振り返ったときに、プレイした人それぞれで違う答えが出てくる。そこに『Disco Elysium』の面白さがある。
同じ「哲学・考察型」なら 名作インディーゲーム50選 、推理・観察系なら Return of the Obra Dinn や Papers, Please も参照。