第1章:血とオイルに塗れた街「クラット」への招待 「死にゲー」と呼ばれるジャンルにおいて、本家フロム・ソフトウェア以外の開発元が放った刺客の中で、『Lies of P(ライズオブピー)』は間違いなくトップクラスの完成度を誇る。舞台は、かつて錬金術と高度な機械人形技術によって栄華を極めた都市「クラット」だ。本来は人間の生活を豊かにし、忠実に共生していたはずの人形たちが、ある日突如として狂気に陥り、人間に牙をむいた。さらに、人間を石化させる奇病「石化病」が蔓延し、街は一瞬にして血とオイル、そして死臭が漂う廃墟へと変貌を遂げる。
プレイヤーは、この地獄と化した街で目覚めた特別な機械人形「P(主人公)」となり、ゼペット爺さんを探す旅に出る。襲いかかってくる人形たちの造形が本作の妙味だ。運動性能は人間を遥かに超えるが、外見は19世紀ヨーロッパを思わせる古臭さを残し、ポップでありながら俊敏さに似合わないゴツい機械感が不気味な恐怖を煽る。この退廃的世界観(GPA:90%) の美しさは、プレイヤーを瞬時にダークファンタジーの深淵へ引きずり込む力を持っている。
購入を検討している人が最も足踏みする理由は、その「難易度の高さ」だろう。結論から言えば、本作はめちゃくちゃ難しい。ここ最近の死にゲーの中でもダントツの渋さを誇る。だが、その難しさの裏には、ただ理不尽なだけではない、プレイヤーを夢中にさせる緻密な計算と、初心者でも己の知略で壁を越えられる「武器調合」という最大の発明が隠されている。本記事では、専門用語をできるだけ避けながら、本作があなたに合うかどうかを解体していく。
作品傾向グラフ(Lies of P) GPA上位タグの抜粋。ストーリー充実度75%・実存的テーマ70%・感情的物語70%・マルチエンド65%も本作の輪郭を形作る。
対象ユーザー(50以上なら推奨) ※初心者20は低め。中級者55・上級者90が主戦場——「買って最後まで楽しめるか」で迷う人は、この幅を前提に読んでほしい。
第2章:耐えられるか? 本作が突きつける「過酷な戦闘システム」の真実 本作の戦闘が難しい最大の理由は、多くのアクションゲームにある「敵の攻撃をボタン一つで避けて、隙を見て殴る」という単純なセオリーが通用しない点にある。防御には「回避」「ガード」「ジャストガード(タイミングよく弾く)」の3種類が存在するが、その全てに明確な弱点(リスク)が用意されている。プレイヤーは常に、敵の出方に合わせてこれらを使い分ける「アドリブのパズル」を強いられる。
回避のロジックと罠 ボタンを押した瞬間の無敵時間は比較的長く、敵の横をすり抜ける動きは一見万能に見える。しかし、敵の身体が不気味に赤く光る大技「フューリーアタック(赤色攻撃)」の前では、回避の無敵時間は完全に無効化される。「危ないからとりあえず転がって逃げる」という甘えは、赤色攻撃の前に一瞬で叩き潰される仕様だ。
ガードと「ガードリゲイン(体力回復)」 武器を構えて正面から受け止めるガードは、最も確実な防御手段だ。ただし本作には「100%ダメージをカットする盾」は存在しない。ガードをしても、こちらの体力は確実に少し削られる。ここに「ガードリゲイン」がある——ガードで削られた体力は、ゲージが白く点滅している間にすぐさま敵を殴り返すことで、奪われた体力を吸い取って回復できる。しかしガードも万能ではない。赤色攻撃や、あまりにも重い一撃の前には、ガードそのものが崩されて手痛いダメージを負う。
ジャストガードの快感と、崖っぷちの絶望 敵の攻撃が自分に当たる極限の瞬間にガードボタンを合わせると「ジャストガード」が発動する。火花がオレンジ色に激しく散るこの防御は、体力が一切削られない最強の選択肢だ。連続成功で敵に目に見えない疲労が溜まり、やがてフラフラになる大チャンス(スタッガー有効)へ追い詰められる。しかし、成功した瞬間プレイヤーの身体は風圧で大きく後ろへ弾き飛ばされる(ノックバック)のだ。
ステージは高低差のある狭い足場——大聖堂の梁など——が多く、完璧なジャストガードを続けた結果、その反動のノックバックで足場から転落死する、という理不尽な罠も仕込まれている。プレイ中、コントローラーを投げたくなる場面は少なくない。
戦闘の使い分けと、初心者向けの抜け道 だからこそ頭をフル回転させなければならない。「ボスの速い連続攻撃はまず通常ガードで様子見し、削られすぎたら分かりやすい1発にだけジャストガードを合わせて体力を回復。最後の重い一撃は回避で死角へ抜けて反撃に繋げる」——リアルタイムの戦術選択が、本作の真の面白さだ。
アクションがどうしても苦手な人のために、高度な攻防をすべて無視する選択肢も用意されている。遠くから爆弾や酸の瓶を投げつける「投擲アイテム頼み」や、一発殴って全力でダッシュして逃げる「ヒット&アウェイ」でも、時間をかければボスを圧倒できるよう、ゲームデザインの懐は広く作られている。詳しいパリィ系比較はパリィ系ゲーム15選 も参照してほしい。
第3章:フロム作品・類似ゲームとの決定的な違いと「ちぐはぐさ」の解剖 本作を語る上で避けて通れないのが、本家フロム・ソフトウェアの名作群、および他の傑作死にゲーとの比較だ。結論を言えば、本作はSEKIRO 、Bloodborne 、ダークソウル3 、エルデンリング 、Wo Long 、仁王2 といった先人の「美味しい要素」を貪欲にサンプリングしている。しかし1つの器に混ぜ合わせた結果、プレイヤーを助けるはずのバランス調整が機能せず、奇妙な「ちぐはぐ感」や歪みが剥き出しになる部分がある。初心者が直面する違和感を、他作との違いから紐解いていく。
SEKIROとの比較:弾きの推奨と、スタミナという足枷 SEKIROの戦闘は、本作と同じくジャストガード(弾き)が基本となる。決定的な違いは、SEKIROには「スタミナ」という概念が存在しない点だ。極限のタイミングで連続の弾きを求めるなら、行動回数を制限するスタミナゲージがあっては攻防のテンポが破綻する——SEKIROの開発陣はそれを理解していた。
対して本作は、激しい連続攻撃をジャストガードで凌ぐことを強く推奨してくる割に、スタミナの消費が異様に激しい。初心者がボスの10連続攻撃を完璧にジャストガードし切ったとしよう。敵はフラフラになり、今こそ最大の反撃チャンス——その瞬間に、プレイヤー側のスタミナは完全に枯渇しており、一発も殴れずにチャンスを見送る。あまりにも理不尽でちぐはぐなタイムラインが付きまとう。
Bloodborneとの比較:強靭の不在と、リゲインの機能不全 本作のビジュアルや、攻撃を当てることで体力を吸い上げるシステムはBloodborneに酷似している。Bloodborneでこの回復システムが神がかったバランスだったのは、特定のカウンター(銃パリィ)を決めることで、どんなに巨大な敵でも一発で確実にダウンさせ、安全に体力を貪り食う時間が約束されていたからだ。
しかし本作は、敵の「強靭(のけぞりにくさ)」が異常に高い。ジャストガードで「敵がフラフラになる権利」を獲得しても、敵は一切モーションを止めず、ハイパーアーマーのまま暴れ続ける。殴られながら命がけで致命の一撃を狙わなければならず、美味しい要素を混ぜた結果、お互いの良さを打ち消し合っている印象が否めない。
エルデンリングとの比較:特殊ダウンと、一発の重み エルデンリングでは、重い一撃を与え続ければいつか敵が特殊ダウンを起こすという信頼感があった。ダウンから繰り出す「致命の一撃」のダメージは非常に大きく、一発逆転のビルドが成立していた。
本作では、敵の体勢を崩すにはまず体力を「白い枠」が表示されるまで追い詰め、さらにタメ攻撃(チャージヘビーアタック)という極めて隙の大きい一撃を正確に叩き込まなければダウンすら奪えない。暴れ狂うボスの目の前で最大級の隙を晒す行為そのものが高難度だ。苦労してダウンを奪っても、致命の一撃のダメージ量がエルデンリングほど圧倒的ではないため、「リスクとリターンが見合っていない」と感じやすい。
Wo Long・仁王との比較:赤色攻撃の視覚化と追尾性能 Wo Longでは、敵の強力な赤色攻撃に対して入力タイミングを「光るエフェクト」で明確に2回に分けて視覚化し、カウンターを合わせやすくしていた。仁王シリーズでは、大技に対して確定で割り込める強力なカウンター(特技)が用意され、明確な対抗手段が与えられていた。
本作の赤色攻撃は不親切極まりない。敵が赤く光ってから振り下ろされるまでの溜め時間が完全に不規則で、視覚的な手がかりがほとんどない。どれだけ横にダッシュして逃げようとしても、敵が磁石のように正確に追尾(ホーミング)してくる。他作ではプレイヤー側の有利なシステムで相殺していた要素を、本作では単に「プレイヤー側の有利を削ぎ落として難易度を上げる」ために使っている面がある。このバランスの渋さこそ、本作が「ソウルライクの中でダントツで難しい」と言われる所以だ。
GPAスコアで見るパリィ難易度の位置づけ パリィ・死にゲー15選 の分析では、対象15作品を横断すると「高難度」と「アクション性」がサイト平均(おおむね40〜50%)を大きく上回り、パリィ系は70〜95%帯に集中する。以下のグラフは同記事で用いた、編集部独自の「パリィ難易度」評価(GPA公式スコアではない)だ。
パリィ系ゲーム・本記事独自の難易度評価(10段階を%換算) ※ 本記事独自の「パリィ難易度」評価(GPAの公式スコアではありません)。GPAの高難度スコアとは異なります。出典: パリィ・死にゲー好きにおすすめのゲーム15選
本作は88%——SEKIRO(95%)・仁王2(92%)に次ぐ上位帯に位置する。エルデンリング(80%)より厳しく、Stellar Blade(65%)やExpedition 33(75%)より一段シビアだ。第2章・第3章で述べた「ちぐはぐさ」は、この数値の裏側にある。
第4章:初心者を救う最大の発明——「武器調合システム」 本作がどれほど理不尽な難易度を突きつけてこようとも、絶対にクソゲーと呼ばれない理由が、この「武器調合システム」にある。武器は、攻撃力やガード時のダメージ軽減率を決める「刃(本体部分)」と、攻撃の振り方(モーション)や能力値補正を決める「柄(持ち手部分)」の2パーツで構成され、街の拠点で自由に組み替えられる。
攻撃力と振り方の完全な分離 従来のアクションゲームでは、「大剣は攻撃力が高いけれど振りが遅すぎて諦めよう」「短剣は快適だけれど攻撃力が低すぎて歯が立たない」というジレンマが必ず存在した。本作はこの壁をデザインの力で破壊した。
例えば「巨大で重厚なパイプレンチの刃(圧倒的な攻撃力と高いガード性能)」を取り外し、「細身のレイピアや槍の柄(超高速の突きモーション)」と組み合わせる。パイプレンチの狂気的な一撃の重さを維持したまま、レイピアのように目にも留まらぬ速さで突き出す——夢のようなオリジナル武器が誕生する。GPAのアクション性85% の裏側にある「自分好みの手触りを探す」自由度は、ここに集約されている。
フェーブルアーツと、素材を消費しない優しさ 刃と柄にはそれぞれ異なる「フェーブルアーツ(必殺技・バフ・特殊カウンター)」が1つずつ設定されている。この2つの組み合わせを考えるだけでも、ビルドの戦略性は無限に広がる。何より素晴らしいのは、武器の組み合わせを変更する際、貴重な素材やお金を一切消費しない点だ。ペナルティはゼロ。何度でも試行錯誤できる。
次のエリアのボスが「炎」に弱いと分かったら、手持ちの武器をその場でバラし、炎属性の刃に、自分が最も使い慣れたモーションの柄をはめ直すだけでいい。この試行錯誤のストレスを無くした設計は、初心者にとって最大の救済措置となる。
単純な最強組み合わせを拒む細かな仕様 ゲームバランスが完全に崩壊しないよう、開発者は細かなこだわりを仕込んでいる。刃ごとに「斬撃」「刺突」の得意モーションが設定され、合致した柄を組み合わせないとダメージが低下する。あまりにも重い刃を軽量な柄につけると、刃の重量に引っ張られて振りの速度がほんの少し遅くなる減速補正も存在する。
単純に「一番強くて、一番振りが早いやつを組み合わせれば勝ち」という安易な答えにせず、自分のビルド(能力値の方向性)に合わせて「一番しっくりくる使い勝手」を模索させるパズルとしての奥深さが、何百時間遊んでも飽きない熱量を生み出している。
第5章:忍耐の果てのカタルシスと、購入前の注意点 本作の全体的な難易度は、近年のトレンドから見ても異様に高い。その根本的な原因は、エルデンリングのように「過度なレベル上げによるゴリ押し」という救済措置を、開発者が意図的に機能しにくくしている点にある。エルデンリングであれば、勝てないボスがいたとしても別エリアでザコ敵を狩り、レベルを100程度まで上げればステータスの暴力で瞬殺することが可能だった。しかし本作は一本道のエリア進行ベースであり、レベルを少し上げた程度では、敵の攻撃力とこちらの防御リスクの差は埋まらない。結局、何度も死んで敵の動きを見極め、アクションの腕を磨く「忍耐」を真っ向から強いられる。
助っ人NPC「除霊」への冷徹な評価 どうしても勝てない初心者のために、ボス戦の前に「除霊」と呼ばれる助っ人NPC(仲間)を召喚できる。序盤のボス戦では囮になってくれるため頼もしいが、中盤以降、ボスが強くなるにつれてAIの調整不足が露呈する。
この除霊は、とにかく「引くこと」を一切覚えない圧倒的な脳筋スタイルだ。敵が赤く光る大技を繰り出そうが、広範囲に毒を撒き散らそうが、回避もガードも一切使わずに全力で突撃していく。運が悪いとボス戦開始から数十秒で一方的にボコられて速攻で蒸発する。少なくとも、ボス戦の終わりまで生き残ってくれることはほぼないと思っていい。
ラスボスをソロで倒し切った達成感 このお助け要素が不完全であり、過酷な忍耐を求められるからこそ、本作をクリアした時の脳汁の量は尋常ではない。エルデンリングのラスボスは相打ちというなんとも締まらない幕引きだったが、本作では数時間をかけてボスのすべてのモーションを暗記し、己の指先の技術だけでラスボスを完璧に倒し切った。その瞬間に押し寄せる圧倒的なカタルシスと達成感は、他のゲームでは絶対に味わえない極上のご褒美だった。
読者層別:買う前に自分がどこに当てはまるか プレイして分かった体感として、ソウルライク系のゲーム初心者——「死にゲー」という言葉は聞いたことがあるが、まだ一本もクリアしていない人——には、いきなり本作を買うより先に、Stellar Blade(ステラブレイド) とClair Obscur: Expedition 33(クレールオブスキュール) をノーマル難易度 で遊ぶ方がおすすめだ。前者は回避が十分機能しパリィ難易度65%帯、後者はターン制とリアルタイム守りの緩急があり75%帯——どちらも「死んで学ぶ」構造はあるが、入口の壁は本作より低い。
中級者以上——アクションゲームに慣れており、高難度の手応えそのものを求める人——には、エルデンリング (80%)と本作 Lies of P(88%)が向いている。エルデンリングはオープンワールドでレベル上げの逃げ道があり、本作は一本道でスタミナとジャストガードの調整がより厳しい。どちらも「忍耐を前提にした達成感」を取りに行く作品だ。
購入前の最終チェック 最後に、これから本作を買おうか迷っている人に1つの注意点を伝えておく。本作はストーリーの没入感を誘うダークな世界観が素晴らしい一方で、日本語の翻訳がやや不親切だ。意味は通じるものの、急に登場人物の口調がブレてお嬢様言葉のようになったり、不自然な誤字が散見される。こうしたインディーズならではの粗さは事前に理解しておくべきだ。
本作は、何度も挑戦してアクションの腕を磨く「忍耐の耐性」がある人にしかオススメすることはできない。しかし、その過酷な試練を乗り越える覚悟があるならば、本家フロム・ソフトウェア以外が開発したゲームの中では、文句なしに最高峰の完成度を誇る一作だ。あなたのプロファイルが「圧倒的な達成感」と「武器調合のパズル」にシンクロするなら、今すぐクラットの街へ足を踏み入れるべきである。
GPAの類似スコアで近いタイトル 本ページ上部の類似ゲームスライダーと並べて読むと分かりやすい。退廃的世界観と高難度が高い作品ほど、Lies of Pに近い「暗い世界で、死を繰り返しながら戦う」体験が多い。
1. SEKIRO: SHADOWS DIE TWICE(隻狼)
類似度 79% 共通点:ジャストガード中心の近接戦闘、高いアクション性と高難度。違い:SEKIROにスタミナがなく、弾きと攻防のテンポが一体化している。Lies of Pより調整が整っている印象。
類似タググラフ(上位5タグ) 2. Bloodborne(ブラッドボーン)
類似度 78% 共通点:退廃的ビジュアル、攻撃ヒットで体力を吸い上げる回復の流れ。違い:Bloodborneの銃パリィと強靭のバランスが、Lies of Pより読みやすい。
類似タググラフ(上位5タグ) 3. Stellar Blade(ステラブレイド)
類似度 75% 共通点:パリィ要素を持つアクションRPG、退廃的SF世界。違い:Stellar Bladeは回避が十分機能し、高難度70%で間口が広い。Lies of Pより「パリィが苦手なら回避」が成立する。
類似タググラフ(上位5タグ) 本記事のデータはGPA(Gamer's Profile Analyzer)の独自タグ重みづけシステムに基づいています。各作品の最新スコアおよび類似ゲームランキングはGPAトップページから各ゲームの詳細ページをご確認ください。